敵の打ちたいところに打つ「遠見の角」で局面をリード|早石田の実戦に現れた変化
こんにちは!マサ公です😊
今日は早石田の実戦に現れた「遠見の名角」の実例をご紹介したいと思います。
「遠見の角」とは自陣などの離れた位置から、敵陣を遠くにらむ角を攻めの起点とするもので、「角筋は受けにくい」とも言われるとおり受けの難しい攻めです。
この実例は早石田の実戦の一変化から生まれました。
早石田、別名「升田式石田流」です。
この戦法は出現当初は奇襲戦法に位置付けられ、ハメ手のような扱いを受けてきました。
しかし升田実力制第4代名人によって創意工夫され実戦で大きな戦果をあげました。
現在では特に先手番での振り飛車党の積極策として多用されています。
昭和46年度の升田九段対大山名人の名人戦で両者は死闘を繰り広げました。
升田挑戦者がこの戦法を駆使し、第3局では歴史に残る妙手が出た対戦としても有名です。
今日はこの戦法の一端に迫り、序盤の進行と中終盤を見ていきましょう。
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詳しくは下記記事をご覧ください。
第1章-1 中終盤次の一手編
第1問 敵の打ちたいところに打つ
上図を見たときに、まず先手の嫌みから考えてみましょう。
放っておくと嫌な手は、☖16銀と打たれる手で、次に☖27香を狙っています。
見出しにも書きましたとおり、この局面での急所の手は敵の打ちたいところに打てです。
攻めにも効く遠見の〇打ちです。
お考えください。
第1問解答
☗16角
正解は☗16角です。
この手は☖16銀を防ぎつつ、☗52竜☖同銀☗同角成を狙っています。
実践では後手は☖34銀打と受けましたが、☗45歩が厳しく☖同歩は☗44歩、☖同銀は狙いの☗52竜があり、後手は適当な受けがありません。
このように、敵の打ちたいところに打つ攻防の角打ちは、優位拡大の原動力となりえます。
参考にしてください。
第2章 序盤の駒組みと変化
将棋のルールについては下記記事をご覧ください。
棋譜の見方については下記記事をご覧ください。
1. 出だしのポイント3手目☗75歩
開始局面からの指し手
☗76歩☖34歩☗75歩(第1図)
第1図
☗76歩☖34歩と角道を開け合う出だしから始まります。
そして3手目の☗75歩がこの戦法の骨子となる手です。
このあと飛車を7筋に振って、☗76飛と構える形を総称して「石田流三間飛車」と呼びます。
2. 角交換は怖くない
第1図以下の指し手
☖84歩☗78飛(第2図)
第2図
後手は☖84歩と居飛車の作戦を明示します。
この手で☖62銀とする手には、☗66歩として角交換がないノーマル石田流となり、別の将棋になります。
先手は☗78飛と三間飛車に構えます。
このとき後手が☖88角成☗同銀☖45角と角の両成を狙ってきたらどうなるでしょうか。
一見受けがなさそうですが、☗75歩と突いている形を活かし、☗76角と打つ手があります。
☗43角成を狙っていますので後手は☖42王と受けますが、そこで☗38銀と上がって両方の角成りを受けることができます(参考1図動画)。
参考1図動画
ゆえに角交換は怖くないのです。
3. 奇襲!王手飛車取り
第2図以下の指し手
☖85歩☗48王(第3図)
第3図
後手は☖85歩と飛車先を伸ばしてきます。
先手は悠然と☗48王と囲います。
しかし後手に☖86歩とされても大丈夫なのでしょうか。
結論から言うと、これは先手が仕掛けた罠です。
もし☖86歩☗同歩☖同飛とくれば、そこで☗74歩と突く手があります。
この手は☖同歩と取るしかなく、そこで☗22角成☖同銀☗95角として、目から火が出る王手飛車取りが決まります(参考2図動画)。
参考2図動画
4. 囲いが完成、ここで☖86歩は?
第3図以下の指し手
☖62銀☗38王☖42王☗28王☖32王☗38銀(第4図)
第4図
後手は用心して、☖62銀と銀を繰り出して攻撃に備えます。
先手は☗38王。
ここで☖86歩☗同歩☖同飛は、☗22角成☖同銀☗77角として飛車銀両取りをかけることができます(参考3図)。
参考3図
以下王の囲い合いになり、先手は☗38銀と美濃囲いを完成して第4図の局面を迎えます。
ここでも☖86歩が気になりますが、このタイミングではまた別の対策があります。
☖86歩☗同歩☖同飛に、今度は☗88飛と飛車をブツケます。
飛車交換は打ち込みのスキがある後手が不利なので、☖87歩と交換を拒否しますが先手は☗98飛と寄っておきます。
後手☖52金右に☗78金として次に☗88歩を狙います。
以下一例として参考4図動画のような展開が考えられますが、角を手持ちにしている分、先手が指せる分かれだと思います。
参考4図動画
5. 必然の角交換、以下は駒組
第4図以下の指し手
☖64歩☗76飛☖88角成☗同銀☖22銀(第5図)
第5図
後手は☖64歩と、次に☖63銀の形を目指します。
先手は☗76飛と、いよいよ石田流の構えを取ります。
放っておくと☗66歩とされ、ノーマル石田流になってしまうので、この戦型にした意味を求めるなら後手は☖88角成の一手になります。
☗同銀に☖22銀は、角筋に備える駒組となります。
6. 着々と駒組みが進む
第5図以下の指し手
☗78金☖63銀☗16歩☖14歩☗77桂(第6図)
第6図
先手は☗78金として角打ちのスキに備えます。
後手は☖63銀と飛車先に備えます。
端を突き合ったのち、先手は☗77桂として攻撃に備えます。
7. 遊び銀の活用
第6図以下の指し手
☖33銀☗79銀☖52金左☗68銀(第7図)
第7図
後手は☖33銀と壁銀を解消します。
ここで先手に大事な手があります。
この局面のポイントは、☗88銀が働きにくい駒になっていることに着目することです。
となれば☗79銀と中央に寄せる手が正しい感覚となります。
後手は☖52金左と右に厚い構えをとってきますが、先手は☗79銀の継続で☗68銀とします。
8. 後手飛車先を厚く受ける
第7図以下の指し手
☖94歩☗66歩☖51金寄☗67銀☖84飛(第8図)
第8図
後手は☖94歩と様子を見ます。
先手は☗66歩と、場合による☗65歩の開戦を狙います。
駒組が長くなりそうなので、後手は☗51金寄と金を寄せてきます。
先手は☗67銀と自然に構えます。
後手は☖84飛と先手の飛車先に厚く備え、場合による☖74歩の交換を見せます。
9. 銀冠を目指しつつ馬作りに備える
第8図以下の指して
☗56銀☖54銀☗96歩☖42金上☗26歩(第9図)
第9図
先手は☗56銀と☗65歩の攻撃を見せます。
後手も☖54銀と6筋に備えます。
先手は☗96歩の様子見。
後手は☖42金上と上部に厚く構えます。
ここで先手は☗46歩と突きたいのですが、これには☖69角と打つ手があります。
☗88金に☖25角成と馬を作られて、先手面白くありません。
そこで馬作りを防ぎつつ、銀冠にする手を含みにして☗26歩とつきます。
10. ☖35歩の位取りが急所
第9図以下の指し手
☖35歩☗46歩☖44歩☗47銀引(第10図)
第10図
ここが後手方の一つのポイントになります。
☖35歩の位取り(歩が五段目に進むこと)は、先手の☗36歩を妨害しつつ、次に☖34銀とするノビノビとした陣形を目指す手です。
この手は先手にとって嫌な手で、凹んだ形になりましたが予定どおり☗46歩とします。
後手は☖44歩と対抗します。
そこで先手は☗47銀引と銀を引いて、さらに王を固めます。
11. ついに開戦
第10図以下の指して
☖43銀☗58銀☖24歩☗56歩☖89角(第11図)
第11図
後手は☖43銀と、さらに固めつつ手待ちします。
先手の☗58銀も同じような意味です。
後手は☖24歩と王様の懐を広げつつ、☖25歩の攻撃を見せます。
ここで☗56歩と突いたのが誘いの好きです。
果たして後手は☖89角と開戦してきました。
金が動くと☖56角成と馬を作られてしまいます。
以下は中終盤次の一手編で解説します。
第1章-2 中終盤次の一手
第2問 ☗89角の受け方
いよいよ開戦となった☖89角に対して、どう金取りを受けるのかという問題です。
金を逃げる手がないとすれば、金に連絡をつけることになります。
例えば☗67銀は角が憤死する心配は無いので、悠々と☖34銀直とたたれます。
このあと先手は、☗68金として次に☗78銀を見る手はありますが、☖67角成☗同金☖78銀と打たれて困ります(参考5図)。
参考5図
☖89角は、受け方によっては先手がリードするチャンスなのです。
ガッチリ受けておいて、ゆっくり☗89角をタダで召し取る手を狙います。
第二ヒント
角を打つ手です。
お考えください。
第2問解答
☗69角
正解は☗69角です。
変な形ですが、この手は次に☗47銀右~☗79金の角のタダ取りを見た厳しい受け方です。
タダ取りを見せられては後手も☗78角成と切るしかなく、以下第2問へと進みます。
第3問 斬り合い
上図は飛車が死んでいるので手は限られています。
タダで取られるわけにはいかないので反撃します。
☖84飛が格好の目標になります。
お考えください。
第3問解答
☗85歩
☗85歩と斬り合いにもっていくしかない局面です。
以下☖76銀成☗84歩☖88飛と進み、そこで☗98角が☖58飛成に☗76角を見て好調な手となります(参考6図動画)。
参考6図動画
☗98角には☖77成銀と取るよりありませんが、そこで☗49金としっかり受けて不満はありません。
第4問 スキに打ち込む手筋の〇
上図は今、先手が☗54角と角を切って後手が☖同歩と応じた局面です。
駒の損得は先手の銀損ですが、この瞬間に王様に絡む手筋の手があります。
もし銀があったら、打ち込む場所が容易に想像できる地点がありますね。
そのスキに〇を打つ手も厳しいのです。
お考えください。
第4問 決め手の〇打ち
この問題は難しい詰みの変化を含んでいます。
ですから正解手順を見て、
「こんな風に将棋って勝ちが決まるんだ」
と感じながら動画を観賞してください。
第4問解答
☗34銀
正解は☗34銀です。
この手に☖25金は、☗42竜☖同歩☗23銀成☖同王☗41角☖32飛☗13歩成☖同歩(☖同桂は☗21飛以下早詰み)☗34金☖12王☗23金打☖11王☗12飛☖同飛☗同金☖同王☗23金☖11王☗12飛までの詰みです(参考8図動画)。
参考8図動画
☖25金と取る手がないとすれば、次に☗23銀成☖同金☗34桂が厳しい狙いになります。
実践は☖11桂と受けましたが、☗23銀成☖同桂☗34桂が実現し、先手の勝ちが決まりました。
まとめ
今日は先手早石田対居飛車の実戦の一連の流れを追ってみました。
第1章-1 中終盤つに一手編のポイント
第2章 序盤の駒組と変化編のポイント
- 早石田は3手目☗75歩から始まる
- 後手の飛車先は、受けなくても悪くならない様々な変化がある
- 角打ちのスキを作らないように、慎重に駒組を進める
- 遊び銀の活用
- 誘いのスキで開戦を誘う
第1章-2 中終盤次の一手編のポイント
- 開戦の☖89角打ちに、タダ取りを見せる受けの☗69角
- 飛車の取り合いで勝負する
- 終盤、際どい銀打ちで一手勝ちを目指す
早石田は振り飛車側が先手番のときの積極策として、久保九段などが愛用しています。
角を持ち合うので、お互いに角の打ち込みのスキを作らないように、神経を使う将棋となります。
中盤、振り飛車側から動く手は難しいのですが、手待ちを重ね駒の組み合いという特殊な将棋になりやすいです。
私的には、この戦法のオススメ度は、10点中6点といったところでしょうか。
この記事を参考にしていただいて、皆さんの得意戦法のレパートリーを広げてみてください。
お読みいただきありがとうございました。
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