【将棋定跡の基礎】これだけ覚えればバッチリ!初手の組み合わせから分かれる基本戦法
こんにちは!マサ公です😊
今回から将棋の「※定跡」に焦点をあてたコーナーを設けていきたいと思います。
代表的な先手後手の初手4パターンから分岐する、戦法のバリエーションを解説していきたいと思います。
あわせて将棋初心者の方向けに、棋譜の表し方・読み方も詳細に解説していきます。
※定跡・・・プロなどが研究し日々進化している、将棋の序盤(始めから開戦まで)、中盤(開戦から優劣の分かれる辺りまで)の地図みたいなもの
第1章 棋譜の表し方・読み方
定跡を解説する前に棋譜(一局の将棋の流れを記録するために駒の動きを記号化したもの)の表し方・読み方について解説します。
本章のポイント
- 歩が進む場合
- 飛車が成る場合
- 桂馬が成る(成らない)場合
- 香車が成る・打つ場合
- 歩を打つ場合
- 複数の銀の行き場所が重なる場合
- 複数の金の行き場所が重なる場合
- 同じ場所に動く場合
棋譜の表し方についてパターンを第1図に示しました。
第1図
上図を使って黄色のマーカーの位置に駒が進む場合の棋譜の表し方を解説します。
なお☗は「先手」、☖は「後手」の意味です。
歩が進む場合
一番左 ①は、右から数えて9列目、上辺から5段目の位置なので95です。
なので一個下の96の歩が95に進むときは
☗95歩
と表します。
飛車が成る場合
左から2列目②は、82の位置に飛車が成る場合です。
上の81の飛車が成るときは
☗82飛引成(「ひきなり」と読みます)
と表します。
下の83の飛車が成るときは
☗82飛行成(「ゆきなり」と読みます)
と表します。
桂馬が成る(成らない)場合
真ん中上から3段目③、65の桂馬が53に進む場合は
☗53桂左成(「ひだりなり」と読みます)
と表します。
45の桂馬が53に進む場合は
☗53桂右成(「みぎなり」と読みます)
と表します。
65の桂馬が53に成らないで進む場合は
☗53桂左不成(「ひだりならず」と読みます)
と表します。
香車が進む・打つ場合
右上④は24の香車が22に進む場合で
☗22香成
と表します。
持ち駒の香車を22に打つ場合は、24の香車が進む場合と区別するために
☗22香打(「うち」と読みます)
と表します。
歩を打つ場合
その下⑤は単純に持ち駒の歩を26に打つ場合で
☗23歩
と表し、「打」は付けません。
複数の銀の行き場所が重なる場合
下段左⑥は下の3枚の銀が同じ67に進むケースで
左の78の銀の場合
☗67銀左
真ん中の68の銀の場合
☗67銀直(「すぐ」と読みます)
右の58の銀の場合
☗67銀右
と表します。
複数の金の行き場所が重なる場合
下段右⑦は3枚の金が同じ37に進むケースで
上の36の金の場合
☗37金引(「ひき」と読みます)
左の47の金の場合
☗37金寄(「より」と読みます)
下の38の金の場合
☗37金上(「あがる」と読みます)
と表します。
同じ場所に動く場合
第2図をご覧ください。
第2図
今、先手が☗34歩と歩を取ったところです。
43の銀でこの歩を取ることになりますが、
棋譜上の表記は
(☗34歩)☖同銀
となります。
第2章 初手について
「将棋の初手は何を指したらいいの?」
とお思いになりませんか。
結論から言うと、先手・後手の初手を組み合わせて大まかに4通の出だしがあります。
本章のポイント
- ☗76歩・☖34歩
- ☗76歩・☖84歩
- ☗26歩・☖34歩
- ☗26歩・☖84歩
初手は大駒(飛車と角)の働きを強める手を指すのが一般的です。
角道を開ける☗76歩(後手の場合☖34歩)か、飛車先を突く☗26歩(☖84歩)の組み合わせで序盤の大まかな流れが定まります。
1. ☗76歩・☖34歩
第3図
先手☗76歩、後手☖34歩と角道を開け合う形です。
角がぶつかり合っていますが☗22角成とされても☖同銀で大丈夫です。
2. ☗76歩・☖84歩
第4図
先手☗76歩に対して後手が☖84歩と飛車先を突く形です。
3. ☗26歩・☖34歩
第5図
先手の飛車先を突く☗26歩に対して、後手が☖34歩と角道を開ける形です。
4. ☗26歩・☖84歩
第6図
先手☗26歩、後手☖84歩と互いに飛車先を突き合う形です。
第3章 戦法のバリエーション
第2章で解説した初手の4パターンから、いくつかの戦法に分かれていきます。
代表的な戦法のザックリとしたバリエーションを、下記に動画で例示してみました。
手順は気にされなくて構いませんので、「こんな形になるんだな」というイメージをつかんでいただければと思います。
本章のポイント
2. ☗76歩・☖84歩から分岐
- 相矢倉
- 角換わり
- (雁木)
- (振り飛車)
- (角換わり)
- (雁木)
- 相掛り
- (角換わり)
- (雁木)
1-1 振り飛車
第7図(動画)
振り飛車は、飛車の右からの位置によって5列(中飛車)、4列(四間飛車)、3列(三間飛車)、2列(向かい飛車)に分かれます。
第6図は後手四間飛車の例です。
先手と後手の王様の守りの形(囲い)にはそれぞれ名前があり、先手居飛車側(飛車が元の位置にいる側)の守りを
舟囲い(「ふながこい」と読みます)
後手振り飛車側の守りを
美濃囲い(「みのがこい」と読みます)
といいます。
1-2 相振り飛車
第8図(動画)
相振り飛車は、互いの飛車の位置によってさまざまなバリエーションがあります。
第7図は、向かい間飛車vs向かい間飛車の例です。
先手の囲いは
右矢倉囲い(「みぎやぐらがこい」と読みます)
後手の囲いを
穴熊(「あなぐま」と読みます)
といいます。
1-3 横歩取り
第9図(動画)
横歩取りは、相居飛車(先手も後手も飛車を元の位置で使う戦型)の1バリエーションです。
複数の歩を持ちあうのが特徴です。
最終手☗27歩以降、後手は22の銀を繰り出し、場合によっては☖35銀から☖26歩を狙う将棋になります。
先手は☗75歩から☗86歩と、8筋の歩を伸ばして飛車の86への転戦を狙う将棋に進展します。
先手・後手の囲いを
中住居(「なかずまい」と読みます)
といいます。
1-4 雁木
第10図(動画)
雁木は、相居飛車の1バリエーションで、角道を止めて67に銀がくる形が特徴です。
最終手☗47銀以下、後手☖75歩の開戦には☗65歩と反発する将棋になります。
先手の守りを
雁木囲い(「がんぎがこい」と読みます)
後手の守りは
左美濃囲い
といいます。
2-1 相矢倉
第11図(動画)
相矢倉は、相居飛車の代表的な戦型と言える形です。
最終手☖14歩以下、☗64角☖同歩☗26銀☖65歩☗同歩☖75歩と闘いの火蓋が切られ、☗同歩と取れば☖39角から馬づくり狙う将棋になります。
守りは
矢倉囲い
です。
2-2 角換わり
第12図(動画)
角換わりは、プロ間で人気のある戦型で角を持ち合うのを特徴としています。
最終手☖14歩以下、先手は☗66歩から☗79玉か☗88玉の形にして、後手が手待ちならば、機を見て☗45桂から☗24歩を狙って開戦する将棋になります。
守りは
矢倉囲いの類似形
になります。
4-1 相掛り
第13図(動画)
相掛り(「あいがかり」と読みます) 飛車先の歩を突いていって一歩を持ち合い、王様を浅く囲い合うのが特徴です。
最終手☗46歩以降の駒組は先手は☗47銀~☗48金~☗29飛の形を作り待ちます。
後手も☖64歩~☖63銀~☖62金~☖81飛の形で待つと、互いに戦機を捉えにくい将棋となります。
守りは後手が
中住居
先手の囲いにはポピュラーな名前はありません。
まとめ
今日は将棋の定跡について以下の3つのポイントと、戦法には大まかに分けて7つの類型があることを学んできました。
定跡を学ぶにはまず棋譜の 表し方・読み方を覚えることが基本となります。
また大まかですが、将棋の初手には4パターンあり、そこからさまざまな戦型に分かれていきます。
その4パターンから分かれる代表的な戦法を見てきました。
各戦法の序盤、中盤の研究しつくされた手順が定跡です。
言ってみれば地図ですが、将棋は無限の可能性を秘めており定跡は生きています。
日々進歩しており、プロをはじめとして人々によって創意工夫が凝らされ続けています。
皆さんも腕が上がってきたら、丸暗記した定跡どおりに指すだけでなく 、新たな手の可能性を探っていけるようになりますよ。
また今回ご紹介した戦法は、ザッと見積もっても20類型近くある戦法のうちのほんの一部です。
全部定跡を覚えるのは大変なので、得意戦法を持つことをお勧めします。
例えば振り飛車を得意戦法とすれば、上の戦法の7類型のうち振り飛車と相振り飛車だけ覚えればよいのです。
得意戦法を駆使して気持ち良く勝ったときの気分の良さは格別ですよ。
お読みいただきありがとうございました。
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定番だけどやっぱり怖い?振り飛車側、棒銀を木村美濃☗68金型で迎え撃つ
こんにちは! マサ公です😊
先手の受けの形は木村美濃☗68金型を採用してみました。
木村美濃は故木村14世名人が、戦前香落ち戦で多用した形でした。
故大山15世名人の時代にも、ツノ銀中飛車の守りの形として流行しました。
木村美濃は王が薄く、木村名人は王が裸になって、空中遊泳するような将棋を読み切って勝たれていました。
それは当時の名人戦が、持ち時間15時間の三日制で行われていたという、持ち時間の豊富さゆえの事情とも言えます。
持ち時間の短い現代では穴熊のような、王に流れ弾が当たりにくい囲いが好まれているのも、納得のいく実情でしょう。
本局も例にもれず際どい将棋となりました。
最後に見せ場がありますのでご期待ください。
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第1章 先手三間飛車VS居飛車棒銀、序盤全体の流れとポイント
序盤全体の流れ
まずこの将棋の序盤全体の流れの動画をご覧ください。
基本図動画
序盤のポイント
- 後手、棒銀の意思表示
- 先手、木村美濃に組み☗68金型で迎え撃つ
- 後手、小競り合いから☖74銀型を目指す
- 後手、損のない突き捨て☖86歩
- 後手の☖13角で本格的な戦いが始まる
1. 後手、棒銀の意思表示
第1図
上図は後手が☖73銀と棒銀の意思表示をした局面です。
後手の急戦の定番といえば棒銀です。
振り飛車側としては、受け方を間違えるといっぺんに潰されてしまう、破壊力抜群の戦法です。
2. 先手、木村美濃に組み☗68金型で迎え撃つ
第2図
棒銀対策にはいろいろな形がありますが、私が有力視しているのは木村美濃と☗68金型の組み合わせです。
上図がその布陣で、☗68金は持久戦になれば右に寄せていく形になります。
3. 後手、小競り合いから☖74銀型を目指す
第3図
後手は棒銀の方針に沿って☖75歩と仕掛けますが、動画でもお分かりになりますとおり、まだ本格的な戦いにはなりません。
この流れは中盤前の小競り合いといったところでしょうか。
「上図の局面で☖72飛としてきたらどうするのにゃ?」
ちなみに☗76同銀の局面で、後手が☖72飛と決戦する手は☗65歩と先手から大捌きに打って出る手があります。
以下☖77角成に☗68金型の特性を活かして☗同金と応じる手があります。
後手は☖65歩と歩を取るくらいですが、そこで☗83角☖73飛☗65角成と馬作りを狙う手があり、先手充分の形勢になります【参考1図】。
参考1図
先手にはこれといった角の打ち込みのスキがなく、一方的に馬を作ることができます。
4. 後手、損のない突き捨て☖86歩
第4図
上図は後手が☖86歩と飛車先の歩を突き捨ててきた局面です。
居飛車側としては、本格的な戦いの前の常道とも言える突き捨てです。
先手から☗88飛~☗85歩と、反撃する手がない形ないので損がありません。
これに対して☗同角は、後手に☖65歩の仕掛けを与えるのが嫌な形なので、☗同歩と応じます。
5. 後手の☖13角で本格的な戦いが始まる
第5図
上図は後手が☗68金に狙いをつけて☖13角とした局面です。
この手から本格的な戦いが始まります。
放っておけば、☖65歩☗同歩☖同桂(角が動けない)を狙っています。
この形の受け方から次の一手編に入ります。
第2章 中終盤次の一手問題4選
第1問 ☖13角の受け方
上図は第5図を再掲しています。
さて上図でこのまま放っておけないとすると、受け方を考えなければいけません。
☗68金が狙われていますので、逃げる手が有力です。
どこへ逃げたら良いでしょう。
三択からお選びください。
A ☗78金
B ☗69金
C ☗58金
第1問解答
B ☗69金
正解はBの☗69金です。
この手は☖57角成を許すので一見先手が苦しそうです。
しかしそこで☗68角とすると馬は行き所がなく、角交換の一手となり☖57角成の一手が無駄な手となってしまいます。
そこで後手は☗15歩の角頭攻めに備えて☖24角としますが、それでも☗68角とブッつける手があります。
これに対して☖33角では動いた意味がありません。
そこで☖68同角成と角交換してきますが、☗同金と応じておいて、後手の☖24角がやはり無駄な手となります。
しかし後手もただ無駄な手を指したわけではなく、ここで再度☖24角と打つ手が有力です。
今度は☗58金と応じ☖79角成と進んで第2問です。
他の候補手のうちA☗78金は、後手が☖57角成とくれば☗68角で同じ形になります。
しかし他の手を指されたとき、☗78金は金が王から遠ざかる手となり、中央に活用しにくい分、☗69金より劣ります。
C☗58金は☖79角成と成り込まれてしまいます。
本譜との違いは先手の角が捌けていない点です。
このとき☗68角は、☖69馬と飛車取りに寄られ馬が生還してしまいます。
第2問 反撃
上図は後手が☖79角成と角を成り込んだ局面です。
ここで先手は反撃に転じます。
後手の弱点はどこでしょう。
三択からお選びください。
A ☗55歩
B ☗46角
C ☗72角
第2問解答
A ☗55歩
正解はA☗55歩です。
この手は放っておいて次に☗54歩と取り込まれると、☖同銀は☗72角があるので後手にとって非常に厳しい反撃です。
☖同歩と取り、☗54歩に☖62銀と耐えておくしかないですが、そこで先手は☗46角と打ちます。
この手は馬を消そうという手です。
本譜は☖同馬☗同銀☖88歩と進行して第3問へと進行しましたが・・。
「☗46角に☖69馬とされたらどうするのにゃ?」
☖69馬とかわす手には☗78歩と辛抱しておいて、次に☗55角の狙いがあるので先手不満はありません(参考3図)。
参考2図
他の候補手ですがBの単に☗46角は、手順前後です。
☖69馬☗88飛と進行し、後からの☗55歩は☗72角の狙いがないため、後手に馬を生還されてしまいます。
Cの単に☗72角は☖71飛とされて角が死んでしまいます。
第3問 攻防の〇
上図は後手が☖88歩と歩を打ってきた局面です。
ヒントは攻防の〇です。
三択からお選びください。
A ☗47角
B ☗88同飛
C ☗77桂
第3問解答
A ☗47角
正解はA☗47角です。
この手は74の銀取りと同時に、☗58金に紐をつける攻防の角です。
Cの単に☗77桂は☖76歩☗同銀☖69角とされ、これは先手困ります。
☗47角はこの順を未然に防いでおり、しかも銀取りなので後手はこれを防がなければなりません。
☖65歩と防ぐ手は☗77桂で、かえって☗65桂と跳ねる調子がついてしまいます。
また☖63銀直は53の地点が弱くなるので、後で☗55銀と出られたときに、☗44歩☖同歩☗45歩を狙われてやりにくいです(参考4図)。
参考3図
結局☖63銀引とするしかありませんが、これで☗74歩の狙いができました。
Bの☗88同飛は☖79角の飛車銀両取りで困ります。
第4問 〇の遅早(おそはや)
上図は☖71銀と銀取りをかわした局面です。
このままだと25の桂を取りながら歩が進んでくるので、忙しい局面です。
ヒントは〇の遅早(ゆっくりしているようで早い手)です。
三択からお選びください。
A ☗72歩
B ☗62銀
C ☗63と
第4問解答
C ☗63と
正解はCの☗63とです。
この手は次に☗53歩を狙っており、☖25歩のスピードに充分対抗できます。
具体的には☖25歩☗53歩☖26歩に、☗35銀と玉頭攻めに備えつつ攻防に打っておきます。
以下☖25香が嫌ですが、☗44歩と馬を抑えつつ攻めを狙い、☖34歩(☗同銀は☖44馬)☗52歩成と攻め合います。
さらに攻め合う☖27銀には、☗39王☖38銀成☗同角☖27歩成に、☗同角と応じておきます(参考5図)。
参考4図
以下☖同香成には☗同飛が、22の馬に直射して絶好の手となります。
他の候補手ですが、A☗72歩は銀は取れますが、後手陣への響きが薄く大勢に遅れます。
B☗62銀は☖同銀と取ってくれれば☗同とで調子が良いですが、この手には☖31飛と逃げる手があります。
これでは打った銀が重くなり、ここで☗71銀不成とするようではやはり大勢に遅れます。
AとBに共通して言えることは、この忙しい局面で☖71銀などという、遊び駒(働きの薄い駒)を相手にしている場合ではないということです。
まとめ
今日は先手ノーマル三間飛車VS居飛車棒銀の戦型をテーマに解説してきました。
第1章序盤編のポイントを再掲します。
- 後手、棒銀の意思表示
- 先手、木村美濃に組み☗68金型で迎え撃つ
- 後手、小競り合いから☖74銀型を目指す
- 後手、損のない突き捨て☖86歩
- 後手の☖13角で本格的な戦いが始まる
第2章中終盤次の一手編のポイントは
- ☖13角の受け方
- 厳しい反撃、手順前後に注意
- 攻防の角
- と金の遅早
でした。
第3章詰将棋観賞コーナーのポイントは
「勝ち将棋鬼の如し」
でした。
先手ノーマル三間飛車VS居飛車棒銀の戦型は、最新のトレンドではありませんが、その実戦の中には参考になる手筋があふれています。
これらのポイントを押さえて、皆さんの将棋の上達にお役立てください。
お読みいただきありがとうございました。
関連記事リンク
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敵の打ちたいところに打つ「遠見の角」で局面をリード|早石田の実戦に現れた変化
こんにちは!マサ公です😊
今日は早石田の実戦に現れた「遠見の名角」の実例をご紹介したいと思います。
「遠見の角」とは自陣などの離れた位置から、敵陣を遠くにらむ角を攻めの起点とするもので、「角筋は受けにくい」とも言われるとおり受けの難しい攻めです。
この実例は早石田の実戦の一変化から生まれました。
早石田、別名「升田式石田流」です。
この戦法は出現当初は奇襲戦法に位置付けられ、ハメ手のような扱いを受けてきました。
しかし升田実力制第4代名人によって創意工夫され実戦で大きな戦果をあげました。
現在では特に先手番での振り飛車党の積極策として多用されています。
昭和46年度の升田九段対大山名人の名人戦で両者は死闘を繰り広げました。
升田挑戦者がこの戦法を駆使し、第3局では歴史に残る妙手が出た対戦としても有名です。
今日はこの戦法の一端に迫り、序盤の進行と中終盤を見ていきましょう。
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詳しくは下記記事をご覧ください。
第1章-1 中終盤次の一手編
第1問 敵の打ちたいところに打つ
上図を見たときに、まず先手の嫌みから考えてみましょう。
放っておくと嫌な手は、☖16銀と打たれる手で、次に☖27香を狙っています。
見出しにも書きましたとおり、この局面での急所の手は敵の打ちたいところに打てです。
攻めにも効く遠見の〇打ちです。
お考えください。
第1問解答
☗16角
正解は☗16角です。
この手は☖16銀を防ぎつつ、☗52竜☖同銀☗同角成を狙っています。
実践では後手は☖34銀打と受けましたが、☗45歩が厳しく☖同歩は☗44歩、☖同銀は狙いの☗52竜があり、後手は適当な受けがありません。
このように、敵の打ちたいところに打つ攻防の角打ちは、優位拡大の原動力となりえます。
参考にしてください。
第2章 序盤の駒組みと変化
将棋のルールについては下記記事をご覧ください。
棋譜の見方については下記記事をご覧ください。
1. 出だしのポイント3手目☗75歩
開始局面からの指し手
☗76歩☖34歩☗75歩(第1図)
第1図
☗76歩☖34歩と角道を開け合う出だしから始まります。
そして3手目の☗75歩がこの戦法の骨子となる手です。
このあと飛車を7筋に振って、☗76飛と構える形を総称して「石田流三間飛車」と呼びます。
2. 角交換は怖くない
第1図以下の指し手
☖84歩☗78飛(第2図)
第2図
後手は☖84歩と居飛車の作戦を明示します。
この手で☖62銀とする手には、☗66歩として角交換がないノーマル石田流となり、別の将棋になります。
先手は☗78飛と三間飛車に構えます。
このとき後手が☖88角成☗同銀☖45角と角の両成を狙ってきたらどうなるでしょうか。
一見受けがなさそうですが、☗75歩と突いている形を活かし、☗76角と打つ手があります。
☗43角成を狙っていますので後手は☖42王と受けますが、そこで☗38銀と上がって両方の角成りを受けることができます(参考1図動画)。
参考1図動画
ゆえに角交換は怖くないのです。
3. 奇襲!王手飛車取り
第2図以下の指し手
☖85歩☗48王(第3図)
第3図
後手は☖85歩と飛車先を伸ばしてきます。
先手は悠然と☗48王と囲います。
しかし後手に☖86歩とされても大丈夫なのでしょうか。
結論から言うと、これは先手が仕掛けた罠です。
もし☖86歩☗同歩☖同飛とくれば、そこで☗74歩と突く手があります。
この手は☖同歩と取るしかなく、そこで☗22角成☖同銀☗95角として、目から火が出る王手飛車取りが決まります(参考2図動画)。
参考2図動画
4. 囲いが完成、ここで☖86歩は?
第3図以下の指し手
☖62銀☗38王☖42王☗28王☖32王☗38銀(第4図)
第4図
後手は用心して、☖62銀と銀を繰り出して攻撃に備えます。
先手は☗38王。
ここで☖86歩☗同歩☖同飛は、☗22角成☖同銀☗77角として飛車銀両取りをかけることができます(参考3図)。
参考3図
以下王の囲い合いになり、先手は☗38銀と美濃囲いを完成して第4図の局面を迎えます。
ここでも☖86歩が気になりますが、このタイミングではまた別の対策があります。
☖86歩☗同歩☖同飛に、今度は☗88飛と飛車をブツケます。
飛車交換は打ち込みのスキがある後手が不利なので、☖87歩と交換を拒否しますが先手は☗98飛と寄っておきます。
後手☖52金右に☗78金として次に☗88歩を狙います。
以下一例として参考4図動画のような展開が考えられますが、角を手持ちにしている分、先手が指せる分かれだと思います。
参考4図動画
5. 必然の角交換、以下は駒組
第4図以下の指し手
☖64歩☗76飛☖88角成☗同銀☖22銀(第5図)
第5図
後手は☖64歩と、次に☖63銀の形を目指します。
先手は☗76飛と、いよいよ石田流の構えを取ります。
放っておくと☗66歩とされ、ノーマル石田流になってしまうので、この戦型にした意味を求めるなら後手は☖88角成の一手になります。
☗同銀に☖22銀は、角筋に備える駒組となります。
6. 着々と駒組みが進む
第5図以下の指し手
☗78金☖63銀☗16歩☖14歩☗77桂(第6図)
第6図
先手は☗78金として角打ちのスキに備えます。
後手は☖63銀と飛車先に備えます。
端を突き合ったのち、先手は☗77桂として攻撃に備えます。
7. 遊び銀の活用
第6図以下の指し手
☖33銀☗79銀☖52金左☗68銀(第7図)
第7図
後手は☖33銀と壁銀を解消します。
ここで先手に大事な手があります。
この局面のポイントは、☗88銀が働きにくい駒になっていることに着目することです。
となれば☗79銀と中央に寄せる手が正しい感覚となります。
後手は☖52金左と右に厚い構えをとってきますが、先手は☗79銀の継続で☗68銀とします。
8. 後手飛車先を厚く受ける
第7図以下の指し手
☖94歩☗66歩☖51金寄☗67銀☖84飛(第8図)
第8図
後手は☖94歩と様子を見ます。
先手は☗66歩と、場合による☗65歩の開戦を狙います。
駒組が長くなりそうなので、後手は☗51金寄と金を寄せてきます。
先手は☗67銀と自然に構えます。
後手は☖84飛と先手の飛車先に厚く備え、場合による☖74歩の交換を見せます。
9. 銀冠を目指しつつ馬作りに備える
第8図以下の指して
☗56銀☖54銀☗96歩☖42金上☗26歩(第9図)
第9図
先手は☗56銀と☗65歩の攻撃を見せます。
後手も☖54銀と6筋に備えます。
先手は☗96歩の様子見。
後手は☖42金上と上部に厚く構えます。
ここで先手は☗46歩と突きたいのですが、これには☖69角と打つ手があります。
☗88金に☖25角成と馬を作られて、先手面白くありません。
そこで馬作りを防ぎつつ、銀冠にする手を含みにして☗26歩とつきます。
10. ☖35歩の位取りが急所
第9図以下の指し手
☖35歩☗46歩☖44歩☗47銀引(第10図)
第10図
ここが後手方の一つのポイントになります。
☖35歩の位取り(歩が五段目に進むこと)は、先手の☗36歩を妨害しつつ、次に☖34銀とするノビノビとした陣形を目指す手です。
この手は先手にとって嫌な手で、凹んだ形になりましたが予定どおり☗46歩とします。
後手は☖44歩と対抗します。
そこで先手は☗47銀引と銀を引いて、さらに王を固めます。
11. ついに開戦
第10図以下の指して
☖43銀☗58銀☖24歩☗56歩☖89角(第11図)
第11図
後手は☖43銀と、さらに固めつつ手待ちします。
先手の☗58銀も同じような意味です。
後手は☖24歩と王様の懐を広げつつ、☖25歩の攻撃を見せます。
ここで☗56歩と突いたのが誘いの好きです。
果たして後手は☖89角と開戦してきました。
金が動くと☖56角成と馬を作られてしまいます。
以下は中終盤次の一手編で解説します。
第1章-2 中終盤次の一手
第2問 ☗89角の受け方
いよいよ開戦となった☖89角に対して、どう金取りを受けるのかという問題です。
金を逃げる手がないとすれば、金に連絡をつけることになります。
例えば☗67銀は角が憤死する心配は無いので、悠々と☖34銀直とたたれます。
このあと先手は、☗68金として次に☗78銀を見る手はありますが、☖67角成☗同金☖78銀と打たれて困ります(参考5図)。
参考5図
☖89角は、受け方によっては先手がリードするチャンスなのです。
ガッチリ受けておいて、ゆっくり☗89角をタダで召し取る手を狙います。
第二ヒント
角を打つ手です。
お考えください。
第2問解答
☗69角
正解は☗69角です。
変な形ですが、この手は次に☗47銀右~☗79金の角のタダ取りを見た厳しい受け方です。
タダ取りを見せられては後手も☗78角成と切るしかなく、以下第2問へと進みます。
第3問 斬り合い
上図は飛車が死んでいるので手は限られています。
タダで取られるわけにはいかないので反撃します。
☖84飛が格好の目標になります。
お考えください。
第3問解答
☗85歩
☗85歩と斬り合いにもっていくしかない局面です。
以下☖76銀成☗84歩☖88飛と進み、そこで☗98角が☖58飛成に☗76角を見て好調な手となります(参考6図動画)。
参考6図動画
☗98角には☖77成銀と取るよりありませんが、そこで☗49金としっかり受けて不満はありません。
第4問 スキに打ち込む手筋の〇
上図は今、先手が☗54角と角を切って後手が☖同歩と応じた局面です。
駒の損得は先手の銀損ですが、この瞬間に王様に絡む手筋の手があります。
もし銀があったら、打ち込む場所が容易に想像できる地点がありますね。
そのスキに〇を打つ手も厳しいのです。
お考えください。
第4問 決め手の〇打ち
この問題は難しい詰みの変化を含んでいます。
ですから正解手順を見て、
「こんな風に将棋って勝ちが決まるんだ」
と感じながら動画を観賞してください。
第4問解答
☗34銀
正解は☗34銀です。
この手に☖25金は、☗42竜☖同歩☗23銀成☖同王☗41角☖32飛☗13歩成☖同歩(☖同桂は☗21飛以下早詰み)☗34金☖12王☗23金打☖11王☗12飛☖同飛☗同金☖同王☗23金☖11王☗12飛までの詰みです(参考8図動画)。
参考8図動画
☖25金と取る手がないとすれば、次に☗23銀成☖同金☗34桂が厳しい狙いになります。
実践は☖11桂と受けましたが、☗23銀成☖同桂☗34桂が実現し、先手の勝ちが決まりました。
まとめ
今日は先手早石田対居飛車の実戦の一連の流れを追ってみました。
第1章-1 中終盤つに一手編のポイント
第2章 序盤の駒組と変化編のポイント
- 早石田は3手目☗75歩から始まる
- 後手の飛車先は、受けなくても悪くならない様々な変化がある
- 角打ちのスキを作らないように、慎重に駒組を進める
- 遊び銀の活用
- 誘いのスキで開戦を誘う
第1章-2 中終盤次の一手編のポイント
- 開戦の☖89角打ちに、タダ取りを見せる受けの☗69角
- 飛車の取り合いで勝負する
- 終盤、際どい銀打ちで一手勝ちを目指す
早石田は振り飛車側が先手番のときの積極策として、久保九段などが愛用しています。
角を持ち合うので、お互いに角の打ち込みのスキを作らないように、神経を使う将棋となります。
中盤、振り飛車側から動く手は難しいのですが、手待ちを重ね駒の組み合いという特殊な将棋になりやすいです。
私的には、この戦法のオススメ度は、10点中6点といったところでしょうか。
この記事を参考にしていただいて、皆さんの得意戦法のレパートリーを広げてみてください。
お読みいただきありがとうございました。
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「藤井聡太 強さの本質」書籍編集部編
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米長玉VS四間飛車戦の序盤解説と次の一手7選
皆さん、こんにちは! 将棋大好きマサ公です😊
今回は米長玉VS四間飛車の実戦から序盤の駒組のポイントの解説と、中終盤の次の一手を出題していきたいと思います。
米長玉は故米長永世棋聖が考案した有名な指し方で、戦法というよりも居飛車対振り飛車戦における左美濃作戦の一変化です。
王の位置がその特徴で、先手ならば☗98王、後手ならば☖12王の形を定位置とします。
今日は対振り飛車戦における左美濃定跡、通称「米長玉」を掘り下げてみたいと思います。
さっそく見ていきましょう。
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詳しくは下記記事をご覧ください。
第1章 序盤の駒組
第1章では米長玉VS四間飛車をテーマに、序盤の進行を一手ずつ解説していきたいと思います。
なかでも序盤のポイントの手は、特に詳細に触れていきます。
第1章は初心者の方の参考になると思いますので、重点的に読み進めてみてください。
将棋のルールについては下記記事をご覧ください。
将棋の初手と棋譜の見方については下記記事をご覧ください。
1. 振り飛車の出だしのポイント☖44歩
開始局面からの指し手
☗76歩☖34歩☗26歩☖44歩 (第1図)
第1図
後手が振り飛車を目指す場合の、出だしのポイントの手が☖44歩で、角交換を避けます。
2. 四間飛車
第1図以下の指し手
☗48銀☖32銀☗56歩☖42飛(第2図)
第2図
先手は☗48銀と攻めの銀の活用を目指します。
後手も同じ意味で左の銀を☖32銀と上がります。
☗56歩は銀の出口を作った手です。
そして後手は☖42飛と四間飛車の意思表示をします。
3. 玉の囲い合い
第2図以下の指し手
☗68王☖62王☗78王☖72王(第3図)
第3図
飛車の位置が決まったら、次は王の囲い合いです。
「居玉は避けよ」という格言があり、王を囲い合うのは序盤の大切なミッションです。
4. 先手持久戦の意思表示
第3図からの指して
☗58金右☖82王☗96歩☖94歩☗57銀(第4図)
第4図
先手は☗58金右と右の金を王に寄せます。
後手は☖82王と深い囲いを目指します。
9筋の端の突き合いは、王が端に逃げていったときの懐を広げ合った手です。
そして先手は☗57銀と持久戦の意思表示をします。
先手の手だけ示すと、☗68銀~☗57銀左の形もあり、この作戦は急戦となります。
5. 先手も王を深く囲う準備
第4図以下の指し手
☖43銀☗77角☖52金左☗88銀 (第5図)
第5図
後手の☖43銀は上部に備えた手です。
先手も☗77角と王を深く囲う準備です。
☖52金左は、まだ態度を保留して☖72銀と美濃囲いにする手と、☖92香以下穴熊囲いにする手の両方を含みにした手です。
☗88銀の意味は、棋譜の進行のとおり「銀冠(ぎんかんむり)」と呼ばれる堅い囲いを目指したものです。
6. 着々と駒組みが進行
第5図以下の指し手
☖64歩☗86歩☖74歩☗87銀(第6図)
第6図
☖64歩は、囲いの進展と将来の☖65歩の攻撃を見せた手です。
先手は☗86歩と銀冠を目指します。
後手の☖74歩は、☖73桂とはねる余地を作り攻撃を目指した手です。
先手は☗87銀と着々と囲いの進展を目指します。
7. 後手は美濃囲いの第一段階を完成
第6図以下の指し手
☖73桂☗66歩☖72銀(第7図)
第7図
後手は☖73桂と桂馬が出動して、次に☖65桂の両取りを狙います。
先手は☗66歩とその手を防ぎつつ、さらなる囲いの進展を目指します。
そして後手は☖72銀とついに美濃囲いの第一段階を完成させます。
8. 後手角道を開ける
第7図以下の指し手
☗88王☖45歩(第8図)
第8図
先手は☗88王と王を深く囲います。
これに対して後手は☖45歩と、各道を開けてきたるべき開戦に備えます。
参考
以下はやや難しめな内容なので、初心者の方は読み飛ばしていただいて結構です。
この☖45歩は今がタイミングと言えます。
☖63金左☗78金を交換してからの☖45歩だと、☗25歩☖33角☗24歩☖同歩☗65歩☖44銀☗64歩☖同金(参考1図動画)と決戦される恐れがあります。
参考1図動画
先手は☗24と突き捨て、飛車先を軽くしてから☗65歩と決戦します。
角交換は、後に☗24飛を許し飛車先を突破されてしまうので、☖44銀と交換を拒否します。
しかし☗64歩と取り込まれて、☖同金となった形は金の形が良くありません。
☗65歩の決戦ができるのも、☗78金と囲いが完成しているからです。
その点☗69金型で☖45歩と突けば、先手はまだ囲いが弱く決戦がしにくいのです。
ゆえにこの瞬間が、☖45歩と角道を開けるタイミングと言えるのです。
9. 飛車先は角で備える
第8図以下の指し手
☗25歩☖33角(第9図)
第9図
先手は☗25歩と飛車先の歩を進めます。
つぎに☗24歩とされてはいけませんが、ここで☖33角が大事な手です。
振り飛車を指しこなすには、☗25歩にはワンセットで☖33角とするもの、と覚えてください。
それでも☗24歩ときたら、☖同歩と応じておいて飛車先を破られる事はありません。
10. 四間飛車棒銀に備える
第9図以下の指し手
☗78金☖44銀☗36歩(第10図)
第10図
先手は☗78金と締まり、次に☗67金右とできれば銀冠の完成です。
ここが一つのポイントです。
次に後手に簡単に☖35銀を許してはいけません。
四間飛車棒銀に限らず、棒銀側に簡単に銀の五段目への進出を許すと、作戦的に損をすることが多いのです。
そこで先手は☗36歩と☖35銀を防ぎつつ、☗37桂の活用を目指します。
11. 居飛車の税金
第10図以下の指し手
☖54歩☗67金右☖84歩☗16歩(第11図)
第11図
後手は☖54歩と、場合による☖55歩の開戦を狙います。
先手は予定通り、☗67金右と銀冠を完成させます。
後手は☖84歩と囲いの進展を目指しつつ、場合による☖85歩の攻撃を狙います。
これに対して、先手が☗16歩と突いた手は「居飛車の税金」と言われます。
☗37桂と跳ねるためには、何かの時に☖15角と出られる手が嫌味なのです。
その手をあらかじめ防ぐ☗16歩ですが、この手が一見余計な手を強いられているように見えるので、「税金」と表現されるのです。
☖14歩と端歩を突き合う手を省略して、他の有効な手を後手に指されると、☗16歩が緩い手となってしまう恐れがあるのです。
12. ついに本題の米長玉登場
第11図以下の指し手
☖63金左☗98王(第12図)
第12図
後手は☖63金左と、さらに囲いの進展を目指してきます。
ここでついに本題の米長玉が登場します。
先手が☗98王とした手がそれです。
この端玉が米長玉で、この手は
- ☖33角の角筋から王の位置を逸らす
- 王が端にいる分だけ、横からの攻めに対して一路遠い
という意味を持ちます。
ただ王が端に寄る関係上、将来、端から攻められることは覚悟する必要があります。
故米長邦夫永世棋聖は、この手がでると必ず勝てる、ゲンのいい一手とおっしゃられていました。
その後、米長玉は一つの定跡となり、一時期プロアマ問わず多用されました。
13. 双方の駒組みが完成そして開戦
第12図以下の指し手
☖83銀☗37桂☖72金☗29飛☖35歩(第13図)
第13図
☖83銀と後手も銀冠を目指します。
先手は☗37桂と右の桂馬を活用します。
後手は☖72金と銀冠を完成させます。
先手の☗29飛は、将来☖37歩成とされた手が飛車取りにならないように、未然に当たりを避けつつ手待ちした手です。
そして駒組みがほぼ頂点に達したので、☖35歩と後手から開戦してきます。
ここまでで序盤が終わり、ついに中盤戦に突入します。
第2章 中終盤次の一手
第2章では、次の一手形式で中終盤を解説します。
初心者の方には少し難しくなりますので、読み流していただいて何となくイメージを掴んでください。
答えが分かりやすいヒントを書いたつもりですので、解けたら気分爽快で済ましていただければ充分です。
腕に自信のある方は、ヒントを見ずに問題を考えてみて、後からヒントを見る順番をお勧めします。
第1問 開戦は歩の突き捨てから
序盤編の最終手☖35歩以下、☗同歩☖同銀と進行して上図となります。
「開戦は歩の突き捨てから」と言われ、ここは先手も歩を突き捨てるタイミングです。
☗25歩がいたままでは飛車先が重いですね。
突き捨てて軽くしましょう。
第1問解答
☗24歩
正解は☗24歩です。
☗25歩がいたままでは飛車先が重いので、あらかじめ突き捨ててしまうのが開戦の常道です。
これに対して何で取るかですが、
- ☖同角は☗65歩と突いた手が、香車取りになるのでやりにくいでしょう。
- ☖同銀は☖46歩の攻めを狙っていたのに、☖24銀の形は銀が遊んでしまいます。加えて銀が再び動くと、23に飛車に成られてしまう形になっています。具体的には☗26飛と、桂頭攻めに備えられているくらいで、後手が少し不満でしょう。
したがって☖同歩が自然です。
第2問 駒損覚悟のサバキ
上図は前問の☖24同歩以下、☗34歩☖22角と進んだ局面です。
先手は歩切れで一見手が難しそうですが、ここで駒損覚悟の大サバキに打って出る手があります。
☖35銀が動けば、☗24飛と走ることができますね。
それを実現するために、まずは取られそうな〇を捨てます。
歩切れを解消する意味もあります。
お考えください。
第2問解答(動画)
☗45桂
正解は☗45桂です。
歩切れを解消しつつ桂馬を捨てます。
これには☖同飛と取るしかありませんが、そこで☗46銀とブツケルのが、☖35銀の移動を願う手荒なサバキです。
☖同銀☗同歩☖同飛と進むしかありませんが、そこで☗24飛と走っていい勝負です。
この後☖44角が予想され、☗21飛成と桂馬を取り返しながら一歩先に飛車が成りこんで、先手にこれといった不満はありません。
第3問 相手の駒の働きを封じる
上図は後手が、33にいた角を☖24角と逃がしつつ、先手陣の急所に利かせてきたところです。
このまま☖24角に威張られると、先手の☗77角がまだ攻めに働いておらず、角の働きの差が出そうです。
そこで後手の角を封じれば良いのではないか、という着想がこの局面での正解です。
封じるためには、☗32竜の利きと持ち歩を活かします。
お考えください。
第3問解答
☗35歩
正解は☗35歩です。
これで後手の角の利きを封じることができます。
将棋ではこのように、相手の大駒の利きを封じる手が、有効な手となる場合がよくあります。
一見地味な手ですが、丁寧な手だとも言えます。
雑な手を指すよりも、丁寧な手の積み重ねの方が、良い結果を招くことが多いのです。
第4問 拠点を先手で作る
上図は☗95歩の銀取りに対して、後手が☖69銀と強気に攻め合ってきた局面です。
とっさに金を逃げる一手と判断してしまいそうですが、ここは先手が後手陣に拠点を残すチャンスです。
攻めるとしたら、☖69銀のスピードに勝てる手は王手しかないですね。
☗94歩の取り込みを先手にします。
お考え下さい。
第4問解答
☗93銀
正解は☗93銀です。
この王手に対して王が逃げるのでは、☗93銀が拠点として残ります。
☖同玉の一手ですが☗94歩と取り込んで、歩を取る手はあまりにも不安定なので☖82王と進みます。
そこで☗88金と逃げておけば、駒の損得なしに先手で☗94歩の拠点ができたことになります。
☗93銀のような手は実戦でよく現れますので、こういった手筋があることを学んでください。
第5問 受けの拠点を作る〇打ち
上図は後手が☖48竜と竜を二段目に利かせてきたところです。
このまま無条件に☖88銀成☗同角☖同竜☗同玉☖79角とされてはいけないので、受ける必要があります。
ヒントは、受けの拠点を先手で作る〇打ちです。
その手は受け一方ではなく、チャンスが巡ってくれば攻撃にも役立つ位置に打ちます。
一瞬、両取りにもなっています。
お考え下さい。
第5問解答
☗57角
正解は☗57角です。
この手は一応両取りなので、☖88銀成☗同角までは必然ですが、このとき☗57角が79の地点を守っています。
竜を逃げるよりありませんが、☖58竜は☗68金、☖38竜には☗22竜(詰めろ)と攻め合って充分です。
後手の竜が4筋からずれたので、☖42歩の受けが効かないのです。
また竜が二段目から逸れるのであれば、先手の王が安全になります。
☗57角は将来☗65歩とつけば、9筋方面の攻めに使えてきますし、☗88角が成り込める余地もでてきます。
あとで手に困らないので☗57角は受け一方の手ではないのです。
第6問 攻めをつなげる英断
上図は先手の優勢がハッキリしてきた局面で、ここで攻めをつなぐことができれば、さらに前進することができます。
一見☗63金と打ちこみたくなりますが、後手は金を持っていますので、☗52金打と千日手模様に粘られてしまいます。
63に打ちこむ駒が、桂馬だったらどうでしょうか。
金で取るしかありませんね。
その桂馬が落ちています。
見出しにも書いた英断の〇切りです。
お考えください。
第6問解答
☗73角成
正解は☗73角成です。
☗61竜では攻めの大元を失いますので、桂馬を入手する手段は☗73角成しかありません。
大駒を切るので勇気のいる手ですが、この馬を何でとっても次の☗63桂が厳しくなります。
初心者向けに解説しますと、
- ☖73同金直は、☗63桂に☖72王と逃げると☗71金で詰み。
- ☖73同金左も、☗63桂に☖62王と逃げると☗51竜で詰み。
- ☖73同桂右も、☗63桂に☖81王と逃げると☗92金で詰み。
結局実戦は☖73同金直としましたが、☗63桂がはいり☖同金寄☗同歩成☖同金の形が実現したのです。
「終盤は駒の損得より速度」と言われます。
このように終盤は駒損をしても、王を追い詰める速度の方が大事なのです。
第7問 〇の行き場所を聞く
上図は☗52金の詰めろに対して、☖41歩と受けたところです。
ここで☗51馬と詰めろを継続する手は、☖88竜と反撃されて詰みですし、☗51金打は☖62金打と粘られます。
ここで決め手があります。
今、後手の大事な駒である〇の位置は、攻防に利く一番良い位置となっています。
〇は縦にズレても横にズレても働きが半減するのです。
〇の位置の移動を願って△を打って動向を打診します。
お考えください。
第7問解答
☗49歩
正解は☗49歩です。
この竜取りに後手がどう応じても、竜は最善の位置から逸れることになります。
最善の位置を逸れる手は、事実上パスしたのと同じになり、この切迫した終盤では指すことができません。
実戦では後手は仕方なく☖93桂としましたが、先手は☗48歩とおいしく竜を召し取って、先手の勝ちが決まりました。
まとめ
今日は先手米長玉対四間飛車の実戦の一連の流れを追ってみました。
第1章序盤の駒組み編のポイント
を整理すると
第2章中終盤次の一手編のポイント
を整理すると
- 開戦は歩の突き捨てから
- 中盤は一瞬駒損をしても大駒のサバキを重視する
- 大駒の利きを封じる手が、良い手になることが多い
- 終盤は駒の損得より速度
- 最善の竜の利きを逸らす底歩
となります。
いかがでしたでしょうか。
初心者の方は、序盤の駒組み編だけ覚えていただければ、将棋というゲームのだいたいのイメージを掴むことができると思います。
中終盤次の一手編は、答えが分かりやすいヒントを書いたつもりですので、解けたら気分爽快で済ましていただければ充分です。
「将棋ってこんな流れなんだ」
ということを感じてください。
お読みいただきありがとうございました。
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